今週の症例 12月

2006年12月23日
今週のエキゾチックの新患症例はフェレットが多かったです。

・フェレットの低血糖
除外診断によりおそらくインスリノーマ。現在インスリン値を外注検査中です。

・フェレットの中枢性病変を疑う症例
アリューシャン抗体検査中。MRIを撮れれば良かったのですが諸事情により断念しました。

・フェレットの肝酵素上昇
エコー上は明らかな所見なし。いわゆる肝疾患として対症療法に反応しなければ生検も考慮必要でしょう。

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ポチたま まさお君急逝

2006年12月13日
テレビ東京「ポチたま」のまさお君が亡くなったようです。
この番組は放映時間に家にいないのでほとんど見たことはありませんが・・・

消化管型リンパ腫はT-cell由来が多く3ヶ月生存率も少ないことから、結果としては避けられないものだったと思います。

ちなみに個人的には犬のリンパ腫を診断から治療まで直接担当したことがありません。
他の先生が担当している症例が骨髄抑制などで担当医の休みの日に不調を訴えてくるのを診察するくらいです。
猫やフェレットのリンパ腫は何例も担当し診ていますが。
最近は忙しすぎて腫瘍科認定医の勉強も進みませんが、寝る時間を減らしてやるしかありません。

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フェレットのインスリノーマ

2006年12月05日
□ フェレットの低血糖症の鑑別診断リスト
・インスリノーマ
・肝不全
・敗血症
・副腎機能低下症(アジソン)
・栄養不良
・腫瘍(犬においてインスリノーマの他に肝細胞癌、リンパ腫、血管肉腫、口腔内メラノーマ、肝細胞腫、多発性骨髄腫、平滑筋腫瘍、唾液腺腫瘍が報告されている)

フェレットにおけるインスリノーマは膵島のβ細胞の腫瘍・過形成であり、低血糖を起こす一般的な腫瘍のひとつである。
人のインスリノーマはほとんどが良性であるが、犬やフェレットではほとんどが癌です。
4歳からよくみられますが2歳での報告もあります。


□ 症状
よく見られるのは流涎、悪心、後肢のふらつき、ぼんやりと宙を見つめる、口をひっかく、何となく元気がない、食欲低下、筋の振戦、運動失調、傾眠傾向など
低血糖に起因する脳障害として痙攣、昏睡、不全麻痺、失明もみられる。

症状が持続的に起こる場合と食間や運動、興奮により引き起こされる場合がある。

慢性経過のフェレットでは長時間の低血糖でも症状が現れず、耐性があるように思われる。


□ 診断

生化学検査
・血糖値
通常は低下するが食餌との関係やストレスによる上昇などにより変動するため、インスリノーマの症例でも条件によっては正常値であることもある。
絶食後の血糖値測定が望ましいですが、低血糖発作に注意が必要です。
フェレットにおいては4~6時間の絶食時の血糖値70mg/dl以下ではインスリノーマの疑いがあります。

・血中インスリン濃度
フェレットの正常値の報告 35~250pmol/l(4.9~34.8μU/ml)33~311pmol/l(4.6~43.3μU/ml)
通常上昇するが、変動も大きく個体差もあるため正常値内のこともある。
インスリン/グルコース比(IGR)、修正インスリン/グルコース比(AIGR)比を計算して仮診断するのが通例ですが、最近、犬においてはインスリノーマの診断にはふさわしくないという意見もあり、血糖値が60以下の時のインスリン濃度が正常高値以上でインスリノーマと仮診断しています。

・肝酵素
低血糖による2次的な肝リピドーシスや転移などから上昇していることもある。


X線検査・超音波検査
フェレットではインスリノーマの肺転移は認められていません。
フェレットのインスリノーマは非常に小さいのでエコーで診断されることは稀ですが、転移を明らかにするためや併発する脾腫や副腎疾患の確認のためにも行ないます。

確定診断は膵臓の腫瘤の病理診断で行ないます。


□ 治療

外科手術
フェレットでは孤立性に腫瘍化している例は少なく、びまん性に浸潤していることが多い。
単独の腫瘤では膵結節切除術として鈍性剥離し摘出します。比較的容易にできます。
数箇所の腫瘤がある場合やびまん性のものは膵部分切除を行なう。

術前、術中、術後の2.5~5%グルコースを含む電解質輸液の静脈内点滴
血糖値のモニター
術後48時間の静脈内輸液
→合併症の予防に重要です

悪性のインスリノーマは腸間膜や大網に浸潤し、領域リンパ節(十二指腸、腸間膜、肝臓、脾臓)や肝臓にリンパ行性に転移する。

問題点としては多発すること、数mm以下の場合が多いため確認不可能な腫瘤の遺残が起こりえる、転移病巣のため術後も血糖値の上昇がみられない場合がある。
また膵臓の切除範囲によっては術後高血糖、糖尿病を発症することもあるが、通常は一過性であり2~3週間以内に正常値に戻る。

犬とは異なり術後の膵炎の発症などは稀です。
ほとんどの症例で術後数週間から数ヶ月で再発がみられる。
膵臓の結節を外科的切除したフェレットの平均生存期間は462日(14~1207日)との報告もあります。


内科治療
臨床徴候の維持は6ヶ月から1.5年
治療の目標は低血糖症状を予防することであり、血糖値を正常にすることではありません。

高タンパク、低炭水化物のものを頻回に与える。状態によってはシリンジなどでの給餌も必要となる。
強制給餌用としてはテクニケア、a/d、猫用リーナルケアなど。特に運動後や睡眠から覚醒後に給餌する。
グルコースの要求量を減らすために運動や興奮の制限。
単糖類、二糖類は急激な血糖値の上昇によりインスリン分泌を促すため避ける。
食餌でコントロールできない場合は投薬を行なう。

プレドニゾロン(0.5~2mg/kg BID)
第1選択薬
末梢組織によるブドウ糖の取り込みを阻害し、肝臓での糖新生を増加させることによる。

ジアゾキシド(5~30mg/kg BID)
海外または試薬として入手する。副作用は肝障害、嘔吐、下痢、食欲不振、骨髄抑制
膵臓のβ細胞からのインスリン放出を阻害、肝臓でのグリコーゲン分解と糖新生を促進、細胞のブドウ糖の取り込みを減少させる。

ストレプトゾシン
膵ランゲルハンス島を選択的に破壊。副作用:糖尿病、腎不全、骨髄抑制、肝毒性
犬においては利尿をかけながら500mg/m2の投与量で2時間以上かけて投与している報告もあるがまだまだ不明な点が多い。
フェレットにおける投与量は不明。

オクトレオチド(サンドスタチン)
持続型のソマトスタチン誘導体でインスリンの合成・分泌を阻害する。長期投与で不応となる。
犬では10~40μg/head or(1μg/kg)sc TID
犬での効果は十分に評価されていない。フェレットではほとんど報告がない。

以上、内科療法の問題点としては対症療法のため生涯の投与が必要、腫瘍の進行に伴い血糖値のコントロールが難しくなることです。


□ 予後
生存期間に関する予後不良の因子は弱齢、術前の高インスリン濃度、転移の存在です。

個人的には6歳以上、超音波検査などで転移病変が確認される、麻酔の危険性が高い症例には手術はあまり勧めていません。

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